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イールドカーブと景気循環

2021-03-24

■ 米国ではイールドカーブのベアスティープ化が続いており、景気回復の初期であることを示唆する

■ 金利上昇に対する警戒を強めるべきなのは、イールドカーブがフラット化に転じる局面だろう


   16、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後も米長期金利上昇に歯止めが掛からず、イールドカーブのベアスティープ化(金利上昇局面での長短金利差拡大)が続いている。
   イールドカーブの形状は、金利水準の上昇・低下、長短金利差の拡大・縮小の組み合わせにより主に4つ(ベアスティープ、ベアフラット、ブルスティープ、ブルフラット)に区分される。景気回復の初期には、緩和的な金融政策が維持され、将来の景気回復や物価上昇への期待が高まる。長期金利が大きく上昇し、イールドカーブのベアスティープ(金利上昇、長短金利差拡大)が進行する。景気回復中期に差し掛かると、金融引き締めが織り込まれ始める。短期金利が大きく上昇し、イールドカーブは徐々にベアフラット(金利上昇、長短金利差縮小)に向かう。実際に金融引き締めサイクルが始まると、イールドカーブのベアフラット化は一段と明確になる。その後、金融引き締め効果が浸透し、景気が減速してくると、次第に将来的な利下げが織り込まれ始める。長期金利は景気減速に応じて低下し始めるが、この時点では金融緩和に転じていないため、短期金利は高止まったまま、イールドカーブはブルフラット(金利低下、長短金利差縮小)する。そして、景気低迷が深刻化し、金融緩和に転じると、短期金利も大幅に低下する。イールドカーブはブルスティープ(金利低下、長短金利差拡大)へと移行する。
   以上が景気循環に応じてイールドカーブが辿る一般的な形状変化の経路である。ポイントは、イールドカーブの形状変化には一定のパターンがあり、景気・金融政策サイクルの現在地を推測できる点である*1。最近の米長期金利上昇に対する警戒感は強いが、イールドカーブは米景気が回復初期にあることを示している。景気が失速するか早期金融引き締め観測が浮上しない限りこの傾向が続く可能性が高い。より警戒を強めるべきなのは、イールドカーブがフラット化に転じる局面である。金利上昇の悪影響が生じて景気が減速しつつある(ブルフラット)、もしくは、景気回復の中期に差し掛かり、金融引き締めが近づいている(ベアフラット)シグナルと考えられるためである。
  *1 ただし、日本のように、長期金利も金融政策の対象となっている国では、イールドカーブのシグナルの有効性は低くなる
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