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日銀金融政策決定会合:円安基調の継続につながるか

2021-03-23

■ 3月の日銀金融政策決定会合で、日本銀行は長期金利上昇に対する警戒姿勢を明確にした

■ 世界景気が順調に回復を続けた場合、主要国との長期金利差拡大が円安基調をもたらすと想定


   本稿では、3月18日と19日に行われた日本銀行(以下、日銀)の金融政策決定会合の結果を確認する。市場予想通り、金融政策の現状維持が決定されたが、併せて、今回の政策会合では金融緩和政策を継続するための政策点検の結果も公表された。ただし、こちらについても概ね事前予想通りの結果となり、金融市場の反応は結果発表直後の高下にとどまっている。
   政策点検で注目された決定は、主に3点挙げられる。(1)長期金利の想定変動幅は従来の「±0.10%の倍程度」から「±0.25%程度」まで拡大されたうえ、長期金利の大幅な上昇を抑制するため「連続指値オペ制度」の導入が決定された。(2)上場投資信託(ETF)の買い入れ額は上限を12兆円とし、従来示されていた6兆円のメドを撤廃。また、買入対象のETFを東証株価指数(TOPIX)連動型に限定した。(3)長短金利の引き下げを可能にする目的で、新たに「貸出促進付利制度」の導入を決定した。このうち、(2)については、ETFの買い入れ上限額は維持する一方で、TOPIX連動型のみに買入対象を限定することで、日銀のETF買入が市場へ与える影響を限定させる狙いがあると推測される。また、(3)については、新型コロナオペや貸出支援基金?被災地オペを使った資金供給の残高に応じて、付利金利を設定する制度とされる。この付利金利水準を短期政策金利と連動させることで、金融機関の収益に対する影響を和らげる狙いがあると、日銀は示した。ただし、実際の制度運営と金融市場への影響については、今後の推移を見極める必要があろう。すなわち、(2)と(3)については目先の市場への影響は乏しく、中長期的な視点で判断していく必要があると考える。
   今回の政策点検のなかで、筆者が最も注目しているのは(1)である。年初来、為替市場では主要通貨に対して円が全面安となっているが、要因の一つとして日本と主要国の長期金利差拡大が挙げられよう。そうしたなかで、(1)において日銀は、「連続指値オペ制度」の導入目的を「強力に金利の上限を画するため」と明言した。いわば、長期金利上昇への警戒姿勢を明確にしたことになる。そのため、例えば今後米長期金利が上昇し、その影響が波及した場合でも、日本の長期金利上昇は抑制される公算が大きい。つまり、(1)の決定はいずれ日米長期金利差の拡大に寄与するとみられ、ドル円相場の支えになるのではないか。年末にかけて順調に世界景気が回復に向かえば、円安基調が継続する可能性は高いと想定する。
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