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FRBは長期金利上昇を静観

2021-03-19

3月16、17日(米国時間)に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)では金融政策の変更は見送られた。長期金利上昇に対する各中央銀行の対応が市場では注目されているが、先日の理事会で国債買入れペースの短期的な加速、というやや中途半端な対応を決めた欧州中央銀行(ECB)に対して、米連邦準備制度理事会(FRB)は、具体的な対応を示さなかったのである。

  感染拡大と規制措置が強化され、経済情勢が厳しい中でのユーロ圏での長期金利上昇は、経済ファンダメンタルズの裏付けが乏しく、米国の長期金利上昇に引きずられているという側面が強い。これは、経済活動に悪影響を及ぼす「悪い金利の上昇」である。これに対して米国での長期金利上昇は、感染拡大の抑制、経済活動の改善見通し、1.9兆ドルに及ぶ追加経済対策など、経済環境の改善を反映した、いわば「良い金利の上昇」の性格がある。こうした違いが、ECBとFRBの政策対応の違いに表れたのだ。パウエルFRB議長は記者会見で、「過去1か月の米国債利回り上昇を押し返す理由はない」として、長期金利の上昇を静観する姿勢を見せた。

  経済見通しでは、2021年の成長率の予測値(中央値)は+6.5%と、昨年12月時点での+4.2%から大幅に上方修正された。それを映して、物価の予測値(PCEデフレータ)も+1.8%から+2.4%へと大きく上方修正されている。さらに、FOMC参加者の先行きの政策金利の見通しも上方修正された。

  中央値で見れば、予測期間中の2023年末までFF金利は現状と同じゼロ近傍となっており、政策金利の引き上げは見込まれていない。しかし、前回と比べて、2023年末時点でより高いFF金利の水準を予想する参加者が増えている。それは18人中7人と、半数に迫ってきているのだ。2023年末時点のFF金利の予測値は、0.25%~0.5%を下限、1.0%~1.25%を上限とする範囲に散らばっている。
これを受けて、金融市場はFOMCの予測値(中央値)に反して、2023年末までの政策金利引き上げを見込む向きが増えたのだろう。しかし、それは長期金利のさらなる上昇にはつながっていない。従来よりも早めの政策金利引き上げとなることで、中長期的な物価上昇率の高まりが抑制されるとの期待を反映しているためだろう。




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