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豪中銀は低金利政策を維持できるか

2021-03-17

■ 3月理事会の議事要旨によると、豪中銀は物価目標達成には十分な賃金上昇が必要と認識

■ 2024年より前に政策を調整するとの市場の見方は根強く、金利先高観が豪ドルを支える


   豪中銀(RBA)は3月2日の理事会で政策金利と3年国債利回り目標を0.1%で据え置きとし、債券購入プログラムなどについても現状維持を決定。「物価が2-3%の目標レンジに継続的に収まらない限り、利上げは行わない。実現するためには賃金の伸びが現状より高くなる必要がある」とのガイダンスを維持し、早くても2024年まで物価と雇用の目標は達成できないとみている、との声明を公表した。ただ、RBAも認めているように新型コロナウイルスによる悪影響は他国より軽微だったうえ、豪経済の回復は想定以上に力強い。中国経済がいち早く回復に向かうなか、資源需要が増加もしくは増加するとの期待を背景に豪主要産品の価格が上昇していることも、豪経済には追い風となっている。
   16日に公表された議事要旨には、RBAが目標とする雇用と物価の関係について、「物価が目標レンジ2-3%で持続的に推移するためには、賃金上昇率が3%を超えるような十分な失業率の改善が必要である点でメンバーは合意した」との記述がみられた。四半期の公表となる消費者物価指数と賃金指数は昨年10-12月期に前年比0.9%上昇、同1.4%上昇と、今回示された水準には距離がある。1月の失業率は6.4%とRBAの基本シナリオより早いペースで改善しているが、失業率改善から賃金上昇に至るにはさらに時間が必要と考えられる。3月末の雇用維持給付金制度終了や新たに導入される見習い労働者への賃金補助制度が雇用?賃金の情勢にどのように影響するか、これまで以上に賃金上昇率の動向が注目されよう。ただ、物価と金利が上昇する兆しは既に出ており、RBAが3年国債利回りを0.1%に誘導する現在のイールドカーブコントロール政策を2024年より前に調整するのではないかとの観測は根強い。実際、豪3年国債利回りは2月26日に0.18%台後半へ上昇し、RBAは臨時国債買い入れオペや空売りコストを引き上げる方策の実施のほか、ロウ総裁が物価と雇用の目標達成には時間がかかると強調するなど牽制に必死だ。こうしたなか豪ドルについては、対米ドルで節目0.80米ドルを付けた後に上昇一服となっているものの、金利先高観に支えられ、下値は限られよう。
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