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2021年3月第3週 (15~19日の相場展望)

2021-03-16

先週月曜日は、米国雇用統計を好感し、米国10年債利回りは1.6%を再度越えた。しかしそのレベルでは債券への投資妙味が大きいことから、再度反落したあと、もみ合いの状態となった。しかし週末は1.6%台へと再び乗せている。債券相場のゆるやかな動きを横目に市場は安心感を取り戻しつつあり、金利反応度の大きいナスダック指数は下落したもののダウ平均は早々と史上最高値を更新。債券入札を無難にこなして、10年債利回りが1.6%台までに収まっていることで、週後半はダウ平均の動きに送れる形でナスダック指数へもマネーが戻ってきている。ファンダメンタルの要素からは、1.9兆ドルの新型コロナウィルスへの経済対策が取りまとめられ、11日木曜日にバイデン大統領がサインをしたことでこの法案が正式に発動することとなったことも、リスクオンへ動いた背景となった。 

その中でユーロとポンドの対照的な動きとなった日があった。これはテクニカルからの要因とそのタイミングでECB金融政策理事会が控えていたことが大きな背景。欧州のECB理事会で、米国金利上昇に連れて欧州金利が上昇したことに対してのコメントを期待していた市場は、ユーロ売りに動いた。チャート形状からも売りやすい下地があったことは大きい。昨年夏場からの上昇トレンドを下回ったことが損失覚悟の売り注文をヒットしていく動きに繋がったようだ。ECBは会合でパンデミック緊急購入プログラムの買い入れを次の四半期に拡大することを決定し、期待に近い緩和的要素が強い結果だったが、それでもユーロが反転したのは、イベント前にショートの売りで仕込んだ短期筋の買戻しが強く影響していると考える。その証拠に上昇トレンドラインの上にしっかり戻っておらず、買戻し一巡後は弱含みながらもみあいの展開を想定する。またラガルド総裁率いるECB側は、ユーロ高に警笛を鳴らしていることもあり、もみ合い後は他の通貨と比較して独歩安となる可能性が浮上しそう。

米ドル以外の主要国通貨である英ポンドや豪ドルは、直近で全般ドル安となる場合は上昇基調を強める展開が幾度も見られている。英国は、世界的にワクチン接種開始時期が早く、100人辺りの接種率がトップクラスであり、経済制限解除から経済の立ち上がりの早さに期待がもたれている。またEU離脱以降、売られすぎの通貨代表であったために、買戻しが大きく相場へ影響を及ぼしている。豪国はというと、やはり中国経済の立ち直りが大きく影響しており、利上げは2024年まで行わないと明言している中銀総裁のコメントを受けても下がりにくくなっている。米ドル、豪ドル、英ポンドが下がりづらい相場付きだと、売られるのは残った先進国通貨の円とユーロが想起される。 

現在は、リスクとは関係なく円売りの動きが徐々に進行しており、コロナワクチン接種後の世界経済の立ち直りを先取りしている動きだろう。この円売りは日本国内の要因ではなく、他の通貨国の要因が大きいと考えている。クロス円の中では、ポンド円の上昇が目立っており、押し目があまりなくほぼ連日での高値更新となっている。152円に乗ってきていることで、次のターゲットは155円付近となる。クロス円ということで、ポンド円はポンドドル×ドル円の合計指数、つまり計算値が上昇した程度と捉えられているのが海外勢で、ポンド円のチャート自体、日本勢以外は注視していないと思われる。となると、ポンドドルとドル円の動きを読み解く必要がある。その中でもポンドドルは、上昇チャネル内での動きが継続中で先週はチャネルの下限を接近したが、切り返してチャネル内に戻って上昇基調を保っている。この上昇チャネル内での推移が継続するとなると、ポンド円は短期加熱感が残る中で利食いの売りも出やすいが値を保ちやすいだろう。 


ポンドドル日足チャート

今週の注目は、日本時間水曜日の深夜行われる米国公開市場委員会FOMCである。その他にも日本と英国の金融政策委員会があり中銀イベントが中心の週となる。先週は、1.9兆ドルの新型コロナウィルス経済対策にサインされて、米国10年債利回りが再び1.6%越えとなったが、短期金利は低迷を続けている。長短金利差が拡大していることで、市場では先行きの景気回復の期待が持たれている。今週のFOMC後、パウエル議長定例記者会見の内容に注目が集まる。金利上昇へ警戒コメントがなされない場合は、10年債利回り1.7%越えの可能性とその場合の株価への影響が懸念され、ドルの基調は強めで推移、金価格は弱含みとなりそうだ。またFOMC翌日より日銀も金融政策委員会の開催がある。低金利政策を下掘りする可能性も報道されていることで、それについての動きがあった場合は更なる円安となりドル円110円乗せの可能性も考えられる。英国BOEの金融政策委員会では、資産買取プログラム額の規模縮小があるのかが焦点となってくると思われる。



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