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OECD経済見通し:欧米間の景気格差が鮮明に

2021-03-12

■ OECDが発表した2021年世界経済見通しは、ワクチン普及を前提に上方修正が目立つ結果に

■ 米国経済の成長率の高さが際立つとの認識が、金融市場全般へ徐々に浸透すると想定する


   本稿では、3月9日に発表された経済協力開発機構(OECD)の2021年世界経済見通しについて確認する。世界全体の経済成長率(前回:4.2%→今回:5.6%、以下同)が昨年12月時点の予想値から上方修正されたほか、個別国では、米国(3.2%→6.5%)、インド(7.9%→12.6%)が目立った。OECDはメインシナリオの前提として、政府による景気刺激策の規模と新型コロナウイルスワクチンの普及を重視しているとした。つまり、米国はバイデン政権、インドはモディ政権が大規模な景気刺激策の実施を表明していることが、大幅な上方修正につながったと解釈する。なお、米国の追加経済対策では、カナダ、メキシコ、ユーロ圏、中国など主要貿易相手国の成長にも寄与するとOECDは指摘した。今後も、バイデン政権の追加経済対策第2弾に対する期待は金融市場で広がり、米企業業績の回復期待にもつながりそうだ。
   一方で、ユーロ圏の上方修正幅は0.3%ポイント(+3.6%から+3.9%)にとどまり、今後の欧米間の景気格差が明確となる見込み。なお、個別国ではフランス(6.0%→5.9%)とイタリア(4.3%→4.1%)が、小幅ながら下方修正された。徐々に緩和されているとはいえ、新型コロナ対策として都市封鎖措置を継続する国の多さが、欧州地域の回復ペースの見通しを緩やかにした要因とOECDは指摘した。また、米国と比べて景気刺激策の規模やワクチンの普及ペースが見劣りする点もあり、欧州復興基金の稼働が待たれよう。
   これで年明け以降、国際通貨基金(IMF)、OECD、主要中央銀行など、経済成長率見通しを発表する主要機関では、概ね「ワクチンの普及進展」との前提を表明したことになる。そこで、本稿執筆時点のデータで主要国の新型コロナワクチン接種率*1も確認する。結論としては、米国の接種率が順調に伸びるとみられ、今後も米国資産(株式・債券・通貨)への高い注目度は続くと想定する。主要国で先頭集団にいるのは英国(35.4%)と米国(28.9%)だが、欧州連合(EU、9.9%)はワクチン普及ペースが遅いと言われつつも、世界全体(4.2%)や日本(0.1%)に比べれば進展している。ただ、バイデン政権は5月末までに米国の全成人に対するワクチン接種完了を目標に掲げるなど、欧米間の景気格差が縮小するには至らないだろう。そうした認識は、株式・債券・為替市場などで徐々に浸透していくのではないか。
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