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ECB理事会プレビュー 政策据え置きの見通し

2021-03-10

■ ECBは、新型コロナウイルス対応の債券購入策など現状政策を維持する見通し

■ 長期金利上昇への対応が示唆されれば、ユーロは下落余地を拡大の可能性


   3月11日の欧州中銀(ECB)理事会では、現状政策の据え置きを決定する見通し。新型コロナウイルス禍による景気の落ち込みに対して中心的な政策ツールとなっている、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)は、昨年12月に債券購入枠を1兆3500億ユーロへ拡大し、2022年3月まで実施期間を延長しており、前回1月の理事会に続いて現状政策の効果を見極める姿勢を示すだろう。前回から声明文に追加された、「好ましい資金調達条件を維持できれば、PEPPを全て使用する必要はない」との一文も維持されるとみる。

   3月理事会では四半期ごとのECBスタッフによる経済・物価見通しが公表される。前回の昨年12月時点では、2021年の成長率が3.9%、2022年が4.2%と4%前後の高成長が続くとする一方、物価上昇率は2022年にかけて1.0%前後にとどまり、ECBの物価目標(2%に近いが下回る)は達成出来ないとの見通しであった。先週、デギンドスECB副総裁は、今年1-3月期の成長率は新型コロナ対応の行動制限で低調ながら、通年では見通しの3.9%程度になると述べており、経済見通しの修正は小幅とみられる。一方、同副総裁は物価に関して「今年は見通しを超えることが明白だが、一時的」との認識を示した。減税終了や増税があったドイツのほかオランダなどでも物価上昇が目立ち、今年の物価見通しは上方修正の公算が大きい。

   また、新型コロナワクチンの接種開始や米国の大型追加経済対策などを背景に世界的に景気回復ペースが高まるとの見方が強く、長期金利が上昇している。スペインなど南欧がPEPP増額など積極的な対応を主張する一方、ドイツはPEPPの柔軟な運用で十分と反発しており、11日の理事会では活発な議論が交わされよう。ラガルドECB総裁は長期金利上昇を「注視する」と述べるにとどめているが、会見で今後の対応を示唆する可能性は残る。この場合、ECBが問題視していたユーロ高は既に一服しているものの、対ドルで200日移動平均線のある1.1830ドル付近を割り込み、下落余地を拡大する可能性が高いとみている。

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