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米財政政策から目が離せない

2021-03-09

■ 新型コロナウイルス対策の追加経済対策は成立の公算

■ バイデン政権は選挙公約の実現に向けて動き出す見込み


   米議会上院は6日、追加経済対策法案を可決した。米下院は2月27日に可決したものの、上院で一部修正されたため、再度下院で修正法案を可決する必要はあるが、今週中には成立することが見込まれている。上院での修正内容は、個人への直接給付の年収要件の厳格化や失業保険の追加給付の減額(週400ドルから300ドルに減額の一方、期限を8月29日から9月6日へ延長)、最低賃金引上げ規定の削除などである。上院では地方自治体へのインフラ支援策や教育・医療従事者向け支援策などが追加されており、総額は1.9兆ドルから大きな変動はない見込みで、追加経済対策が年内の景気を押上げることが期待される。
   また、バイデン政権は3月中に、より大規模で長期となるさらなる経済対策案を打ち出す構えで、気候変動対策やインフラ整備、格差是正策等が盛り込まれる見通しである。超党派の調査機関「責任ある連邦予算委員会(CRFB、2020年10月7日)」がバイデン氏の選挙公約をもとに試算したところ、2021-2030年の10年間で、インフラ?国内投資で4.45兆ドル、教育や社会保障などで5.9兆ドルの財政悪化(経済には好影響)、増税など税制改革で4.3兆ドルの財政改善(経済には悪影響)が見込まれ、財政赤字は5.6兆ドル拡大する結果となった。新型コロナ対策などを含めれば、さらに拡大する可能性がある。財政調整プロセスは各会計年度(10月から翌年9月)に1度利用することが可能である。現会計年度では追加経済対策の成立に向けて使用したものの、2022会計年度(2021年10月から2022年9月)ではさらなる経済対策の成立に向けて使用可能となる。長期的な財政政策は米国の経済構造の変化を見通すうえで重要であるほか、米長期金利に対する上昇圧力を一段と強める要因となる可能性があり、議論の行方を注視する必要があるだろう。
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