ドル円の基調転換を確認へ
2021-03-05
■ ドル円は108円台前半を明確に超えれば、昨年3月からの下落基調は上昇基調に転じる可能性
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は4日、「政策スタンスは適切」だとして、現行の緩和策を維持するとの姿勢を堅持。最近の米債利回りの急上昇に注目しているとしつつも、無秩序な動きであるとか、FRBによる介入が必要だとは考えていないとの見解を示した。一方、「FRBの最大雇用と物価安定の2つの責務の目標達成には時間が掛かる」と指摘、最大雇用の達成には失業率が4%以上に改善することが必要とも発言した。16、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では現行の緩和策を調整するハードルは高そうだ。だが、実質金利がマイナス圏にとどまるなか、米長短金利差(10年-2年債利回り差)は1.4%超まで拡大。市場では、資金供給量を変えず、長期金利の引き下げと短期金利の引き上げで、景気回復とインフレ抑制の効果を狙う「ツイストオペ」が検討されるとの観測も浮上している。
一方、19日の日銀政策決定会合の際に公表される政策点検の結果について、市場では長期金利の変動許容幅(現在:±0.1%の倍程度)を拡大するとの見方が大勢。ただ、今朝の衆院財務金融委員会の半期報告後、日銀の黒田総裁は「経済・物価の先行き見通しには下振れリスクが大きい」、「金融システムの脆弱性が高まる可能性もあり、動向を注視する」と述べるにとどめたが、現在の長短金利操作は機能しており、「±0.3%への拡大」には相当な議論が必要で、現段階では変更は不要との見解を示した。
ドル円は今朝のアジア市場で108円ちょうど付近まで上伸、昨年7月以来の高値を付けた。日米欧など主要株価は軟調だが、日米金利差は拡大傾向を強めており、足元のドル高?円安に反映されている。市場予想では、今晩発表される2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比18.2万人増と前月から伸びが高まるが、失業率は前月と変わらず6.3%、平均時給も前月比0.2%と前月と同じ伸び率にとどまる見通し。ドル円は昨年3月高値から今年1月安値までの下落幅に対する半値戻し107円14銭を上抜けたことで上昇に拍車がかかったとみているが、同61.8%戻し108円22銭を上値メドにドル高?円安が一服するだろう。ただし、雇用回復ペースの加速が確認されるなどして同水準を明確に超えれば、チャート分析上は「全戻し」の展開から昨年3月高値111円71銭も視野に入る。