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欧米社債:価格上昇余地は乏しく、「守り」の時間帯へ

2021-02-26

■ 2020年のパフォーマンスでは、米国の高格付け社債が好調だった

■ 2021年の欧米社債は価格上昇余地が乏しく、インカム獲得などに視点を切り替えざるを得ない


    本稿では昨年来の欧米社債市場の動向を確認する。ここでは、格付けが低いハイイールド社債(以下、HY債)と、格付けが高い投資適格級社債(以下、IG債)を主に取り上げる。また、データは欧州と米国いずれも、Bloomberg Barclays指数(現地通貨建て)を採用した。
    欧米社債市場における2020年の傾向は、「米国優位」「高格付が優位」だったと整理できる。主要指数の騰落率は、米国HY債が+7.1%、米国IG債が+9.3%、欧州HY債が+1.7%、欧州IG債が+2.8%、米国MBS(不動産担保証券)が+3.9%、欧州AT1債(永久劣後債)が+1.5%だった。背景は、新型コロナ禍以降に主要中央銀行が進めた大規模な金融緩和が挙げられる。先進国国債利回りは過去最低水準まで低下するなか、「安全資産」である国債の代わりに格付けが高いIG債が買い進まれたという、投資家の行動も後押ししたとみられる。
    一方で、2021年の騰落率(2月25日終了時点)は、次の通りに異なる状況が確認できる。米国HY債が+0.8%、米国IG債がマイナス1.9%、欧州HY債が+1.1%、欧州IG債がマイナス0.8%、米国MBSがマイナス0.6%、欧州AT1債が+2.1%である。つまり、「欧州優位」「低格付が優位」であり、2020年とは逆の傾向になっている。背景は、(1)国債と当該社債の利回り差の過去比較と、(2)国債利回り急上昇の影響と、2点挙げられよう。(1)では、米国HY債とIG債はリーマン危機以降の最低水準まで縮小した一方、欧州社債はHY債が約0.5%、IG債が約0.2%、まだ最低水準まで下がりきっていない。つまり、価格上昇余地はわずかながら欧州社債の方があるようにみえる。また、(2)では「安全資産」である米独の国債利回りが急上昇したことで、格付けの高いIG債利回りにも影響が及んだとみられる。
   欧米社債への投資は、今後「守り」の視点が一層重要となろう。具体的には次の3点を指摘したい。(1)米10年国債利回りは1.5%台(2月25日終了時点)と、2019年末時点の1.9%台に及ばない。よって、IG債を「安全資産」の代わりとして組み込む選択肢は残る。(2)欧米HY債はともに価格上昇余地が乏しく、インカム獲得狙いの保有に方針転換が望ましい。HY債の期待リターンは、欧州が3.2%、米国が4.2%と、米国優位の状況にある。なお、欧州AT1債は3.4%。(3)財政?金融政策の規模や安定性は、米国が優位。以上から、インカム獲得やポートフォリオ組成など「守り」の視点からは、現時点で米国社債の方が優位と筆者は考える。
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