警戒水準に達するJ-REIT
2021-02-25
■ 東証REIT指数が上昇ペースを強める一方、不動産市場ではオフィス、宿泊施設の苦境が明確に
悪影響が顕著なのはホテルなど宿泊施設であり、客室稼働率は昨年5月には12.9%(全国平均)まで急低下。緊急事態宣言の解除や「GoToトラベル」事業など政府の需要喚起策により、11月には46.2%まで持ち直したものの、12月に一部地域での事業停止が決まり38.5%に再び悪化している。1月以降は、首都圏などを対象に2度目の緊急事態宣言が発出されたことに伴って、さらなる悪化が見込まれる。
また、指数最大の割合を占めるオフィス市況の変調も明らかになってきた。リモートワークの普及によりオフィス需要が減少し、全国主要都市で空室率が上昇している。特に東京では昨年12月以降、平均賃料が前年比ベースで下落に転じ、リーマンショック以来となるオフィス市況の下降局面に移行している。現時点では、地方都市の賃料は高止まりしているものの、過去の傾向や外部環境の構造変化を踏まえると、賃料下落圧力は、地方にも波及する可能性は高く、今後、市況の悪化が一段と鮮明になるだろう。
住宅、物流施設のようにコロナ禍で底堅さを保っているものもあるが、全体的にはJ-REITのファンダメンタルズは悪化しており、企業業績の持ち直しとともに上昇する株式市場と状況が異なる。収益性を示す分配金利回り(約3.67%)が2017年以降の平均値(約3.91%)を下回る水準まで低下し、インカム資産としての割安感が薄れつつあることに加えて、賃料の下落圧力に晒され、潜在的な分配金減少の可能性も高い。今後の価格上昇は、投資法人が保有する不動産の持分(純資産価値)の増大(すなわち不動産価格の値上がり)を前提としなければ正当化しづらくなっており、株式的要素が強い投資対象となりつつあることを意味している。
■ 分配金利回りの低下、潜在的な分配金減少の可能性など、インカム資産としての魅力は低い
悪影響が顕著なのはホテルなど宿泊施設であり、客室稼働率は昨年5月には12.9%(全国平均)まで急低下。緊急事態宣言の解除や「GoToトラベル」事業など政府の需要喚起策により、11月には46.2%まで持ち直したものの、12月に一部地域での事業停止が決まり38.5%に再び悪化している。1月以降は、首都圏などを対象に2度目の緊急事態宣言が発出されたことに伴って、さらなる悪化が見込まれる。
また、指数最大の割合を占めるオフィス市況の変調も明らかになってきた。リモートワークの普及によりオフィス需要が減少し、全国主要都市で空室率が上昇している。特に東京では昨年12月以降、平均賃料が前年比ベースで下落に転じ、リーマンショック以来となるオフィス市況の下降局面に移行している。現時点では、地方都市の賃料は高止まりしているものの、過去の傾向や外部環境の構造変化を踏まえると、賃料下落圧力は、地方にも波及する可能性は高く、今後、市況の悪化が一段と鮮明になるだろう。
住宅、物流施設のようにコロナ禍で底堅さを保っているものもあるが、全体的にはJ-REITのファンダメンタルズは悪化しており、企業業績の持ち直しとともに上昇する株式市場と状況が異なる。収益性を示す分配金利回り(約3.67%)が2017年以降の平均値(約3.91%)を下回る水準まで低下し、インカム資産としての割安感が薄れつつあることに加えて、賃料の下落圧力に晒され、潜在的な分配金減少の可能性も高い。今後の価格上昇は、投資法人が保有する不動産の持分(純資産価値)の増大(すなわち不動産価格の値上がり)を前提としなければ正当化しづらくなっており、株式的要素が強い投資対象となりつつあることを意味している。