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日経平均株価と実体経済

2021-02-17

■ 真に議論すべきは足元の景気に対する株価水準の妥当性ではなく、景気回復シナリオの実現性

■ 日経平均株価構成銘柄のうち半数以上はコロナ禍以前の株価水準に回帰できていない


   昨日の日経平均は前週末比564円08銭高の3万0084円15銭で取引を終え、1990年8月2日以来、およそ30年半ぶりに終値ベースで3万円台を回復。一方、寄り付き前に発表された2020年10-12月期の実質GDP(1次速報)は前期比年率12.7%増と市場予想(同9.5%増)を上回る伸びとなったものの、2020年通年では前年比4.8%減と、下落幅は1955年の統計開始以来、リーマンショック後の2009年(同5.7%減)に次ぐ大きさとなった。こうしたなか、「株式市場は実体経済から大きくかい離している」との指摘が一段と強まっている。
   しかし、2020年10-12月期の実質GDPは、新型コロナウイルスの発生が世界的に認識される以前の2019年10-12月期を1.1%下回る水準にまで回復した。そのうえ、国内でも17日から新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されるため、コロナ禍を脱却し、その後のさらなる景気回復への期待が高まっている。こうしたなか、一般的に半年後、1年後を織り込むと言われる株価が足元の景気とかい離することに違和感はない。したがって、真に議論すべきは足元の景気を基準とした株価水準の妥当性ではなく、今後の景気回復シナリオの実現性であろう。ただ、その鍵を握るのはワクチンであり、感染症やワクチンの専門家であっても正確に見通すことはできない。それ故、重大な副反応や接種拒否の増加などといった明確な問題点が浮上しない限り、市場参加者は景気回復シナリオに沿って投資判断を下すとみられる。当面、企業業績見通しの改善に伴う日本株の上昇が続く可能性があろう。
   なお、2019年末から昨日までに日経平均株価は26.2%上昇しているが、その期間に上昇したのは225の構成銘柄のうち101銘柄にとどまる。つまり、半数以上の構成銘柄はコロナ禍以前の株価水準に回帰できておらず、その観点では、むしろ実体経済と一定の整合性が確認できるといえよう。コロナ禍においても業績が良好な一部の銘柄が指数を押し上げており、「日経平均株価が景気動向を示す指標にはなり得ない」との指摘はもっともだが、業績が伴わない銘柄まで一絡げに買われているわけではないことも認識しておきたい。
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