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リフレトレードに死角はないのか

2021-02-12

■ 年明け以降、株価が騰勢を強め、コモディティ価格、長期金利、などが同時に上昇している

■ コモディティ価格、長期金利の上昇は景気の抑制要因となり、潜在的な調整圧力は強まる


 「リフレトレード」というキーワードが多く聞かれるようになっている。景気回復期待を背景に、年明け以降、株式、コモディティなど多くのリスク資産が騰勢を強め、長期金利や市場で織り込まれる期待インフレ率も同時に上昇している。
 「リフレ」とはリフレーション(reflation)の略称で、定義上は、デフレから脱却し、インフレに至る前(すなわちディスインフレ)の状態のことを示すが、デフレ脱却を目指した財政?金融政策の推進という意味合いで用いられることも多い。リフレトレードは、主に後者への期待に基づく取引と言える。1月5日の米ジョージア州の上院議員決選投票を経て、民主党が上下両院で実質的に過半数議席を獲得し、大型経済対策の実現可能性が高まったこと、また財政、金融政策には該当しないが、新型コロナワクチン接種が始まり集団免疫獲得が現実味を帯びてきたこと、がデフレ脱却と景気回復への期待を高め、リフレトレードを促してきたと整理できよう。
  元々、年央以降の経済正常化が見通されていたなか、大型経済対策による景気浮揚効果が加わるため、景気失速の蓋然性は大きく後退している*1。現状では、リフレ期待が早期に見直される要因は少なく、リフレトレード継続を容認するような条件が揃いつつある。
  ただし、コモディティ価格、米長期金利、市場の期待インフレ率(米物価連動国債のブレークイーブン、インフレ率)などが上昇しており、金融市場と実体経済との間に不均衡が蓄積している点は、中期的観点で注意が必要である。一般的に、金利上昇は景気や資産価格の上昇を抑制し、コモディティ価格上昇はコストプッシュインフレ(悪性インフレ)を促すため、景気にはマイナス要因となる。いずれも現時点では水準自体が低く直ちに問題とはならないものの、リフレトレードが持続するほど、潜在的な調整圧力は強まることになる。また、リフレトレードは政策依存度の強い取引でもあり、政策対応の潮目の変化には、より機敏に対応する必要があると考えられる。

*1 一方で、サマーズ・ハーバード大教授ら複数のエコノミストから、1.9兆ドル規模の経済対策による景気過熱、インフレ、金融不安定化などのリスクが指摘されている
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