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日増しにバブルが膨らんでいるわけではない

2021-02-11

■ 日米株のPERは昨年のある時点を境に横ばいで、以降の株高は業績見通しの改善が原動力

■ 米経済正常化が見据えられるなか、EPSの上昇継続との見方は揺らぎにくく、株高は続きやすい


   日経平均は昨日、約30年ぶりに終値ベースで2万9500円台を回復。また、米国では連日、主要株価指数(NYダウ、S&P500、ナスダック総合)がそろって取引時間中の過去最高値を更新。先月末の市場の動揺も一時的にとどまり、日米ともに堅調地合いが続いている。
   こうしたなか、「足元の株価水準はバブル」、「バブル崩壊に備えよ」、といった類の指摘が増えてきた。しかし、S&P500の予想株価収益率(PER)*1は昨年の5月中旬以降、概ね22-24倍で横ばい推移が続いている。日経平均の予想PER*1は同6月上旬に20倍を超え、同12月初旬には22倍付近まで一段と水準を切り上げたが、その後はこちらも横ばい推移。いずれも、現在の水準が適正なのか、その水準を持続することが可能かどうか、などについて、金利動向等を踏まえて慎重に検討する必要はある。しかし、「株価上昇につれて日増しにバブルが膨らんでおり、崩壊のタイミングが近づいている」といったような認識は適切ではないだろう。株価はPERと予想1株当たり利益(EPS)*2の掛け算で求められるが、S&P500は昨年5月中旬、日経平均は少なくとも昨年12月初旬、これ以降の株高はEPSの上昇に沿ったものである。つまり、企業業績見通しの改善が原動力となっており、バブルがさらに膨らんだわけではない。漠然と高値警戒感を抱くのではなく、株高の要因を見極め、正しく恐れる必要があろう。
   コロナショックの最中であった昨年3月から同年末までのドルインデックスとS&P500の相関係数*3は-0.936と、両者はほぼ逆相関を示しており、コロナ禍において「有事のドル買い」といった考えが働いていたとみられる。しかし、今年の年初来では0.426(2月9日時点)と、相関性は明確に逆転している。これは、大規模な米追加経済対策への期待や新型コロナワクチンの接種開始を受けて、市場参加者は今年後半の米経済正常化を本格的に見据え始めたということではないだろうか。よって、米追加経済対策の規模が著しく縮小する、ワクチンの効果が想定よりも小さい、などのリスクシナリオが浮上しない限り、予想EPSの上昇が続くとの見方は揺らぎにくく、日米株は一段高が見込まれよう。

*1予想PERは12カ月先予想EPSに基づく
*2予想EPSはBloombergのコンセンサス予想、12カ月先
*3-1から1の実数値をとり、1に近づくほど順相関、-1に近づくほど逆相関の関係が強くなり、ゼロは無相関を示す
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