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米銀の融資姿勢は厳格化度合いが大きく緩和

2021-02-10

■ 米金融機関の融資姿勢は厳格度合いが大きく緩和した

■ 今年後半のEPSの大幅改善が示唆されるが、株価にはすでに織り込み済み


   米連邦準備理事会(FRB)は2月1日、最新のシニア・ローン・オフィサー・サーベイを公表した。これはFRBが金融機関に対して過去3カ月間の資金需要や融資態度などについて四半期ごとに聞き取り調査を行うもので、調査対象となる金融機関は昨年12月14日に調査票を受け取り、1月4日までに回答した。これによれば、大、中企業(年間売上高5千万ドル以上)向け融資基準DI(全回答に占める厳格化の割合-緩和の割合)は5.5となった。プラス圏にあるため厳格化の領域にはあるものの、厳格化度合いは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため経済活動が制限され2008年10月調査(83.6)以来の水準となった昨年7月調査(71.2)と比較すると大きく緩和している。2019年10月調査(5.4)の水準に接近しており、米主要金融機関が昨年10-12月期決算発表で貸倒引当金の取り崩し開始を明らかにしたことや、米連邦準備理事会(FRB)が昨年6月に発表した配当や自社株買いの制限を緩和したことと整合的で、米国の金融機関は新型コロナ禍の悪影響を概ね乗り越えたことが示唆される。
   同DIは設備投資や鉱工業生産、新規雇用の先行指標として有効に機能してきたほか、企業の営業利益率に対して概ね3四半期の先行性が確認されている。ワクチン接種ペースや新型コロナウイルスの変異の動向などによっては不透明感が強まりかねず、融資基準DIが緩和領域に移行するかは予断を許さない状況が続くものの、営業利益率が改善し今年後半の企業利益を下支えすることが示唆される。ただし、市場ではS&P500株価指数構成企業の一株当たり利益に関して、7-9月期が前年比17.1%増、10-12月期が同12.7%増と予想されており(2月5日時点)、株価はすでに今年後半のEPSの大幅改善を見越した水準に位置している。こうした期待が実現するかを見極めていく姿勢が求められよう。
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