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豪中銀は人口増加率の鈍化を懸念

2021-02-05

■ 豪中銀は2月理事会で政策金利を据え置き、債券購入策の延長を発表

■ ロウ総裁は人口増加率の鈍化が賃金?物価への下押しになることを懸念


   豪中銀(RBA)は2月2日に開催された今年最初の理事会で、政策金利と3年国債利回り目標を過去最低の0.1%で据え置くことを決定した。一方、昨年11月から6カ月間実施している、債券購入プログラム(1000億豪ドル)に1000億豪ドルを追加することも発表した。市場では政策金利据え置きまでは予想通りだったが、追加はサプライズだった。ただ、現行のプログラムが4月に終了後も続けるという意味で、実質的にはプログラムの延長である。声明文では、新型コロナウイルスによる経済の落ち込みからの回復は、想定していた以上に力強いと指摘。ワクチン開発により、見通しも、2、3カ月前より明るいものになっているとした。ただ、経済の回復は依然として、新型コロナの状況と巨額の財政?金融支援次第であるとの認識も示した。RBAの現在の政策は、借入コスト低下、通貨安により経済の回復を支援するもので、追加の債券購入は金融支援の継続を確かにするだろう、とした。RBAは「物価が2-3%の目標レンジに継続的に収まらない限り、利上げは行わない」とするガイダンスを維持、早くても2024年まで物価と雇用の目標は達成しないとした。
   理事会決定の翌日行われた講演でロウRBA総裁は、豪州の新型コロナへの対応はこれまでのところ成功しており、想定以上に回復は進んでいるものの、「まだ先は長い」と述べた。RBAの中心シナリオでは、今年と来年の成長率は3.5%程度に安定し、GDPは今年半ばに新型コロナ前の水準に回復する。だが、2021年の人口増加率は第1次世界大戦後最低の0.2%へ急激に鈍化するとみており、経済が過去の成長軌道へ戻るには時間がかかると懸念を示した。このため、失業率は年末に約6%へ改善する予想だが、賃金や物価への下押し圧力は根強いとRBAは認識している。足元の雇用や物価が改善するなか、RBAの強い慎重姿勢には違和感があったものの、人口問題が背景にあったことが総裁の講演からうかがえた。今後、新型コロナの流行が収束し、国境が解放されても、RBAは物価や雇用の先行きに警戒感をしばらく緩めず、緩和的な政策を長く続ける可能性が高いといえよう。
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