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米ゲーム販売大手株を巡る騒動の焦点

2021-02-04

■ 個人投資家とヘッジファンドの争いは沈静化しつつあるが、問題は政治的な案件にまで発展

■ どちらが良い、悪いの問題ではなく、双方の行為が「相場操縦」に該当するかどうかが焦点


   国では先週、ヘッジファンドによるゲーム販売大手株への空売りに目を付けた個人投資家がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて結託し、一斉に当該株に買いを入れた*1。その結果、ヘッジファンドは損失覚悟の買い戻しに迫られ、株価は一時、年初来で2500%以上も急騰。これを受けた市場の混乱は今週に入って収まりつつあるが、問題は証券取引委員会(SEC)のみならず、議会をも巻き込む事態にまで発展している。
   規模の違いなどはあるが、このような事象は日本の株式市場でも珍しいことではない。昭和の時代には、「仕手筋」と呼ばれる集団が特定の銘柄を買い進めた後、セミナーや電話などで一般投資家に推奨し、株価がさらに吊り上げられた段階で売り抜くという手法がとられていた。現在ではインターネットの普及に伴い、仕手筋の代わりに、掲示板やブログ、SNSなどを利用し、多くの個人投資家を集めて相場を動かそうとする者が存在する。なお、ネット上で著名な一部の投資家であれば、自身の持ち高を公開するだけでも多くの個人投資家が反応する場合がある。そこに意図がないとは考えにくく、株価を吊り上げて売り抜けを狙ったものと推察されよう。これは、売り買いこそ逆ではあるものの、空売りのポジションを仕込んだうえで、SNSを通じてその銘柄の売りを推奨した米ヘッジファンドの動きと類似していると考える。
   つまり、先週の米国の例に戻れば、「市場の混乱を招いたのは、個人投資家、ヘッジファンド、どちらなのか」という問題ではない。一部では、足元の過剰な流動性がこうした事態を招いたとの指摘もあるが、これも問題の核心をついてはいない。相場を動かそうとする意図のある言葉や情報を、インターネットツールを利用して発信する行為、これが「相場操縦」に該当するかどうかが最大の焦点であると筆者は考える。米下院金融委員会は、18日に関係者を呼んで公聴会を開催し、本格的な調査に乗り出す方針を明らかにしている。正常な論点に基づいて議論がなされれば、仮に米株式市場に何らかの規制が導入されたとしても、それは市場の健全化を促すものであり、相場環境を悪化させるものではないだろう。

*1 現物株だけでなく、当該株を対象とするコールオプション(将来の期日までに、その時の市場価格に関係なく、予め決められた価格で買う権利)が大量に買い付けられた。

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