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新興国中銀:一部では年内の利上げ観測が浮上

2021-02-02

■ 一部の新興国では、中央銀行による金融政策正常化が意識されつつある

■ 例えば、ブラジル中銀は早ければ今年の7-9月期に利上げを再開するとの観測が浮上


   年後半にかけて、新興国の中央銀行でも一部で金融引き締めに向かう可能性が高まった。昨年は、新型コロナ禍以降に先進国で大幅な金融緩和が実施された流れが波及し、新興国でも過去最低水準まで政策金利を引き下げる例が多く確認された。その後、昨年秋以降に新興国中銀の間での利下げ基調は一服したものの、直近ではまだ利上げ転換までは至っていない。1月は本稿執筆時点で6カ国(韓国、マレーシア、ブラジル、トルコ、インドネシア、南アフリカ)の新興国中銀が政策会合を実施したが、昨年11月と12月に大幅利上げを実施したトルコを含め、いずれも政策金利は現状維持とした。
   本稿では、新興国中銀の中でも先んじて金融政策正常化へ進みそうな、ブラジルと中国の動向について確認したい。ブラジル中銀は、1月20日に開催された金融政策委員会(COPOM)で、政策金利を過去最低水準である2.0%に据え置いた。一方で、長期間に亘り低金利を維持するとしていた「フォワードガイダンス」を廃止し、金融引き締めへ一歩進んだと市場では解釈された。背景は、食品価格の高騰を受けた物価上昇圧力の高まりがある。昨年12月の消費者物価指数は前年比4.5%上昇となり、ブラジル中銀の物価目標中央値(同4%上昇)を上回っている。直近では食品価格の上昇に注目が集まるが、今後新型コロナワクチンの普及度合いが大きく改善された場合、物価上昇圧力が広範囲に及び、早ければ今年の7-9月期にブラジル中銀が利上げ再開に動く可能性もある。
   中国では1月下旬以降に短期金利が上昇している。例年であれば、春節前の資金需要増加に対応し、中国人民銀行(中央銀行)は大量の資金供給を実施する。しかしながら、今年は同行が短期金利上昇を放置していることに加えて、同総裁が「株式や債券市場は、短期金利上昇の影響を過大評価すべきでない」と述べている。一部でバブル進展の懸念が残るなか、そうした懸念を鎮静化させるべく金融政策の正常化へ舵を切ったとみる市場参加者は多い。
   1月の動向を見ても、直ちに新興国中銀が利上げに転じるとは見込みにくい。ただし、今後は昨年までと状況が変わり、ブラジルや中国を筆頭に各国別の確認が求められよう。特に、直近は金融緩和環境が新興国の金融市場を支えている状況だけに、注意が必要と考える。
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