ベース効果に惑わされることなかれ
2021-01-27
■ テーパリング→金利上昇→リスクオフは、ワクチンが順調に普及しても今年後半のリスクシナリオ
しかしながら、ボスティック総裁やエバンス総裁の発言は、表現には多少の違いがあるものの、いずれも「景気が順調に回復すれば」といった趣旨の前置きがなされている。また、ラガルドECB総裁は理事会後の会見で、「経済見通しの下振れリスクは顕著ではない」との見方を示している。つまり、金融緩和の出口に向けた議論が始まっていることは間違いないだろうが、それは「昨春以降の景気回復基調が維持され、今年の後半には新型コロナワクチンの普及によって経済正常化が進む」という見通しに基づいてのことであり、金融当局者として当然の考えを示したに過ぎないといえよう。新型コロナワクチンについては、変異種に対する有効性や、効果の持続期間など不確実な点も多いうえ、副反応への懸念から接種率が高まらず集団免疫の獲得に至らないこともあり得る。よって、主要中銀が金融緩和の出口に向かい始め、金利の急上昇に伴うリスク回避的な地合いへの転換は、全てが順調に進んだ場合においても今年後半のリスクシナリオと考えられ、現時点で過度に警戒する必要はないとみている。
ただ、昨年の2月から4、5月頃にかけては、新型コロナ感染拡大やそれに伴う都市封鎖により世界経済が歴史的な落ち込みとなった。それから1年が経過する今春、発表される経済指標は前年比の上昇率が押し上げられる(ベース効果)。各国の金融当局者がそのような一時的な現象に惑わされるとは考えにくいが、物価関連指標の伸びが大きくなることで市場参加者がテーパリングへの警戒を強め、株価が伸び悩んだり、振幅が大きくなる可能性があろう。
■ ただ、市場参加者がベース効果に惑わされ、テーパリングへの警戒が強まる可能性も
今月に入り、米アトランタ連銀のボスティック総裁やシカゴ連銀のエバンス総裁といった今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つメンバーをはじめとする複数の米地区連銀総裁が、資産購入の段階的縮小(テーパリング)の年内開始に言及。また、先週の欧州中銀(ECB)理事会では、「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を全て使用する必要はない」との文言が声明に加えられており、市場では主要中銀が金融緩和姿勢を弱めることに対する警戒が生じつつある。
しかしながら、ボスティック総裁やエバンス総裁の発言は、表現には多少の違いがあるものの、いずれも「景気が順調に回復すれば」といった趣旨の前置きがなされている。また、ラガルドECB総裁は理事会後の会見で、「経済見通しの下振れリスクは顕著ではない」との見方を示している。つまり、金融緩和の出口に向けた議論が始まっていることは間違いないだろうが、それは「昨春以降の景気回復基調が維持され、今年の後半には新型コロナワクチンの普及によって経済正常化が進む」という見通しに基づいてのことであり、金融当局者として当然の考えを示したに過ぎないといえよう。新型コロナワクチンについては、変異種に対する有効性や、効果の持続期間など不確実な点も多いうえ、副反応への懸念から接種率が高まらず集団免疫の獲得に至らないこともあり得る。よって、主要中銀が金融緩和の出口に向かい始め、金利の急上昇に伴うリスク回避的な地合いへの転換は、全てが順調に進んだ場合においても今年後半のリスクシナリオと考えられ、現時点で過度に警戒する必要はないとみている。
ただ、昨年の2月から4、5月頃にかけては、新型コロナ感染拡大やそれに伴う都市封鎖により世界経済が歴史的な落ち込みとなった。それから1年が経過する今春、発表される経済指標は前年比の上昇率が押し上げられる(ベース効果)。各国の金融当局者がそのような一時的な現象に惑わされるとは考えにくいが、物価関連指標の伸びが大きくなることで市場参加者がテーパリングへの警戒を強め、株価が伸び悩んだり、振幅が大きくなる可能性があろう。