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原油先物カーブに大きな形状変化

2021-01-26

■ 原油先物価格(WTI)の先物カーブは期近が期先を上回る形状に変化

■ 中長期的な景気回復期待を伴わない限り、期近のWTI上昇は持続性が疑われる


   原油先物市場では受渡期日(限月)が設定されており、限月ごとに先物が取引されている。受渡決済を伴う商品先物では現物の保管コストなどがかさむほか、金利の影響もあり、原油先物価格(WTI)は限月が先になるほど高くなるのが一般的である。例えば、2022年2月限月のWTIは1年分の保管コストなどを見越して価格形成されるので、期近(2021年2月)の先物価格の方が高くなるはずだ。横軸に限月、縦軸にWTIをとり、限月ごとのWTIを結んだチャートを先物カーブという。上述の通り、期近が低く期先が高い先物カーブの形状が一般的であり、こうした状態をコンタンゴという。
   新型コロナ禍の悪影響が経済に及び始めた2020年2月以降、WTIの先物カーブはコンタンゴの状態が続いていた。各時点から5年先限月のWTIは概ね45ドル前後で安定的に推移しており、1月25日時点でも45ドル台となっている。市場では一貫して、新型コロナ禍前後で長期的な原油需給や価格動向に大きな変化はないと認識されてきたことが示唆される。一方で、期近のWTIは景気や金融経済政策に対する市場の見方に強く影響され、比較的大きく変動する。2020年4月には一時マイナスに陥ったが、同12月には5年先限月のWTIを上回り、コンタンゴの形状が崩れた。各国の積極的な金融緩和?財政拡大により景気回復期待が保たれたほか、新型コロナワクチンの普及による経済活動の正常化に対する思惑が期近のWTIを押し上げ、足元では53ドル台に達している。しかしながら、中長期的な景気回復期待の高まりによる期先の上昇を伴わない限り、期近のWTI上昇は持続性が疑われよう。

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