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米国の通貨政策

2021-01-22

■ バイデン新政権は国内の結束を目指し、新型コロナ対策など多くの問題に迅速に対応へ

■ 次期財務長官に指名承認されるイエレン氏の通貨政策はドル高/ドル安でもなく中立を専行か


   20日、米民主党のバイデン氏が第46代大統領に就任した。新型コロナウイルスの感染拡大抑制を最優先に果たすとしたが、公約は経済、環境、移民、など多岐にわたる。就任早々、世界保健機関(WHO)脱退を撤回、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」への復帰を表明したほか、不法移民を合法化し市民権取得を可能にする「移民制度改革法案」の議会提出など多数の大統領令に署名する見通し。史上最高齢の大統領はトランプ政権からの政策転換を図り、分断された国内の結束を目指していく。
   米大統領就任式に先駆けて、次期財務長官に指名されたイエレン前米連邦準備理事会(FRB)議長は19日の上院公聴会で証言。「歴史的な低金利環境のなかで、短期的にはコロナ対策のための財政余力はある」と強調。経済再生に向けて「大きな行動が必要になる」として迅速かつ大規模な財政出動を求めた。財政赤字が過去最大に膨らむなか財源確保も重要課題となるが、目先は増税に焦点を当てず、インフラ投資など長期的戦略との一体化で検討する考えを示した。市場では、国債増発を見込み米長期金利が上昇する場面もみられたが、政策の対応を見極めようと徐々に落ち着きを取り戻している。また、イエレン氏は国債の利払い負担を抑制し、将来的な金利上昇による財政リスクを和らげるため、50年債など超長期債の発行も検討していくと述べた。しかし、需要喚起のため大幅な上乗せ金利を支払わなければならないリスクを踏まえれば、発行に向けては慎重に検討することが求められよう。
   通貨政策については、「米国は競争的な通貨切り下げを志向しない」、「為替レートは市場で決定されるべきだ」としたうえで、「通貨安誘導は決して容認できるものではない」と貿易相手国をけん制する姿勢を示した。サンフランシスコ連銀総裁やFRB議長時代、輸出に及ぼすドル高の悪影響を指摘したため、イエレン氏がドル安を支持するとみる向きもある。一方、通貨政策を監督する財務長官の立場上、長期的にはドル高政策を支持するのが賢明だと、歴代の財務長官は指摘する。だが、議会証言の内容は、コロナ禍の難局を乗り越えるため、今は通貨政策よりも財政政策が優先事項であるとの同氏の認識がうかがえ、為替市場の反応は限定されている。イエレン氏の指名承認は、早ければ21日、遅くとも来週初めには行われる見通しで、米財務省が4月に公表する半期に一度の為替報告書は注目される。
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