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景気回復が今年の金価格上昇のけん引役に

2021-01-21

   金の国際調査機関、ワールド ゴールド カウンシルは1月14日、今年の金価格について、昨年の+24.6%(:ロ
ンドン地金市場協会(LBMA)発表の価格ベース)に比べると緩やかとなるものの、上昇が続くとの見通しを示し
ました。その背景として、世界的な低金利環境の継続に加え、世界の経済状況の改善に伴なう宝飾品需要の回

復を挙げています。

   金の価格は、19年末に1トロイオンス=1,500米ドル台だったものの、昨年には、新型コロナウイルスの世界的
な感染拡大を受け、資金の逃避先として、金ETF(上場投資信託)などに投資マネーが押し寄せたことなどから、
8月上旬に2,000米ドル台の史上最高値をつけました。しかし、行動制限などの感染防止対策や強力な財政?金
融政策が世界的に採られ、最悪期は過ぎたとの見方が拡がると、金価格は1,900米ドルを下回る水準に後退し

て年末を迎えました。

   金の需要を19年のデータで大別し、そのシェアを見ると、約48%を占める宝飾品が最大で、金ETFや地金?金
貨などの投資:約29%、中央銀行?その他機関:約15%、工業品などのテクノロジー:約7%となります。昨年前半
は、コロナ禍による景気悪化を受け、宝飾品需要が低下した一方、投資需要が拡大したことなどから、金価格は
上昇しましたが、年後半には、投資需要の鈍化などから、価格の上昇も一服となりました。今年は、新型コロナ
ウイルスのワクチン接種が普及するに連れ、経済活動の再開が進むほか、コロナ禍で繰り延べられてきた様々
な需要が顕在化することなどもあり、景気回復の進展に伴ない、宝飾品需要も回復すると見込まれます。そして、

宝飾品需要を中心として、金の最大消費国である中国が、景気回復で先行している点が特に注目されています。

   なお、ワクチン接種の普及が難航するなどの問題が生じた場合には、「景気回復→宝飾品の需要回復→金価
格上昇」との見通しの実現性は不透明となるものの、投資需要が再度、高まり、金価格を押し上げる可能性が
浮上します。また、米国では、超緩和的な金融政策は長く続く見通しながら、巨額の財政支出によって財政赤字
が膨らむ中、長期金利が上昇の兆しを見せています。今後、米長期金利が大きく上昇するようなことがあれば、
バリュエーションの高さを指摘されることもある米国株式などを中心に、リスク資産が調整することも想定され、
そのような場合にも、投資需要の高まりを背景に金価格が上昇することが考えられます。
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