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米国株のメインシナリオとリスクシナリオ(2021年)

2021-01-14

■ 金融相場が維持されたまま、業績相場に移行しつつあり、株高が続くとの見方がメインシナリオ

■ 年前半は業績相場の勢い鈍化、年後半は金融相場が終わりに近づくリスクを警戒すべき


    2021年に入り、トランプ米大統領の支持者による連邦議会議事堂乱入事件が発生し、これを受けてトランプ大統領を弾劾訴追する決議案が昨日、米下院で可決されており、米国では政治的な混乱が続いている。加えて、米10年国債利回りは節目の1%をはっきりと上回り、米ジョンズ?ホプキンス大の集計によれば、米国内における新型コロナウイルスによる死者数が12日に4400人を超えて過去最高を記録するなど、悪材料には事欠かない。しかしながら、米国の主要株価指数は今週に入って伸び悩んでいるとはいえ、過去最高値圏を維持している。
   2020年2月下旬から3月にかけてのコロナショック以降の米国株式相場は、大規模な財政出動と金融緩和の組み合わせにより大量に供給されたマネーが株価収益率(PER)を押し上げる、いわゆる金融相場の様相を呈している。しかし、それだけではない。S&P500の予想PER*1は2020年6月以降、概ね21-23倍での振幅にとどまるが、予想1株当たり利益(EPS)の改善が続いていることで、EPSとPERの掛け算で求められる株価が上昇を続けている。つまり、「金融相場」が維持されたまま、「業績相場」に移行しつつある、理想的な状況といえよう。
   現時点では、2021年も米連邦準備理事会(FRB)は大規模な金融緩和策を維持し、新型コロナワクチンの普及に伴い年後半にかけて経済正常化が進む、という見方が市場参加者のメインシナリオになっているとみられる。よって、EPSは上昇、PERは高水準を維持し、株高基調が続くと想定され、リスク回避ムードは高まりづらいと考えられる。ただ、メインシナリオに基づけば、年前半は、新型コロナの感染拡大に歯止めがかからないことで景気回復が頓挫し、業績相場の勢いが弱まるリスクは無視できない。一方、年後半は、景気回復に伴う金融緩和縮小が意識され金融相場が終わりに近づく可能性が浮上しよう。また、ワクチンの普及が想定よりも大幅に遅れるなどして、メインシナリオ自体が修正を迫られる可能性も考えられる。ただ、その場合は、財政/金融政策がさらに追加されて金融相場が継続し、いったんは株価が大きく調整するも急速に持ち直す、つまりコロナショック以降の動きが繰り返されると想定されよう。

*1 Bloombergの12カ月先予想EPSに基づく
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