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米財政政策は短期と長期を区別して注視すべき

2021-01-13

■ 短期的な経済対策は、新型コロナ感染拡大による景気悪化を食い止めるうえで重要

■ 長期的な財政政策は、米国の経済構造の変化を見通すうえで重要


    5日に投開票が行われた米ジョージア州の上院決選投票を受けて、民主党が上下院で実質的に主導権を確保したことで、市場では新政権による財政政策が注目されている。バイデン次期米大統領は8日に、金利が現在のような低水準にある時には、財政赤字が拡大しても直ちに行動を起こすことが経済に対する支援になるとの考えを示した。14日にワクチン配布の加速化計画を含む景気刺激策の原案を発表する見込みとなっているが、こうした短期的な経済対策では、家計向け現金給付の追加や増額、失業保険の特例措置のさらなる延長、州/地方政府向けの補助金拡充などが検討の対象となる。8日に公表された昨年12月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比14万人減少となったが、経済活動制限の影響を直接的に受けている娯楽/宿泊/外食業種では同49.8万人減少した一方、それ以外の幅広い業種では同35.8万人増加するなど、格差が鮮明となっている。短期的な経済対策は新型コロナ感染拡大による景気の悪化を食い止めるうえで重要で、可決/成立には一部の共和党議員の協力が必要になることから、新たな政権/議会でどのように議論が進展するか注目したい。
    一方で、長期的な財政政策にはインフラ投資や企業/高所得層向け増税などが含まれることになる。超党派の調査機関「責任ある連邦予算委員会(CRFB、2020年10月7日)」によれば、バイデン新政権の政策により2021-2030年の10年間で、インフラ/国内投資で4.45兆ドルの財政悪化(経済には好影響)、増税など税制改革で4.3兆ドルの財政改善(経済には悪影響)が見込まれている。実現までには時間がかかることが想定されるものの、長期的な財政政策は米国の経済構造の変化を見通すうえで重要である。1月20日の大統領就任式での宣誓や2月上旬と見込まれる予算教書の内容を精査し、実現可能性を判断する必要があるだろう。

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