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新興国株:堅調な展開を支えた好材料と、その継続性

2021-01-12

■ 2020年の新興国株式は、グロースとバリューが交互に牽引するなか、堅調な結果となった

■ 2021年を見通す上で、「世界的な低金利環境」と「新型コロナを巡る動向」の悪化の兆しに注意


   本稿では、2020年の新興国株式市場の動向を振り返り、2021年開始直後の情勢を確認したい。MSCI指数(米ドル建て)で昨年1年間の騰落率を振り返ると、新興国全体は+15.8%、グロース指数は+31.0%、バリュー指数は+2.6%と、「グロース主導の堅調な展開」だったと整理できる。また、主要地域別では、アジアが+26.0%の一方、欧州(新興国)がマイナス15.9%、南米がマイナス16.0%と、「アジア主導」だったとも言える。ただし、11月と12月に限ればこの構図は逆転しており、グロース指数の+10.1%に対して、バリュー指数は+18.8%と、バリュー優位の展開だった。また、この2カ月間では、欧州(新興国)と南米がいずれも+35%と大幅な復調をみせており、「グロース優位=アジア地域優位」「バリュー優位=南米、欧州(新興国)地域優位」の構図は、より明確になったと解釈できよう。なお、主要新興国では、韓国、台湾、ロシア、ブラジルなどで過去最高値を更新している。

   結果論だが、2020年の新興国株式市場が堅調だった背景は4点と筆者は考える。つまり、(1)世界的な低金利環境、(2)中国景気の回復、(3)堅調な資源価格、(4)新型コロナウイルスを巡る動向である。直近の2カ月間は、これら4つの要因が全て、市場参加者にポジティブと解釈されたため、年末にかけて新興国株式の騰勢が維持されたとみる。よって、2021年の動向を考える上でも、まずはこれらの要因の継続性を吟味することが必要となろう。

   現時点で継続性が疑われるのは(1)と(4)だと筆者は推測する。(1)では1月8日発行のPRESTIA Insight*で確認されたように、米連邦準備理事会(FRB)の一部当局者は、早ければ今年の年末までに資産買入の段階的縮小(テーパリング)を開始できるとの見解を示した。加えて、米国の次回利上げに関する市場の織り込みが2023年後半へ前倒しとなるなど、米国金利の先高観が強まっており、新興国株式に悪影響を及ぼす材料になり得る。また、(4)では昨年末に英国で確認された新型コロナ変異種の拡散に注意したい。確かにワクチン普及に対する期待感は続くが、南アフリカやブラジルなど新興国の一部では、依然新型コロナの新規感染者数は増加傾向にある。新興国全体の年初からの騰落率(1月11日時点)は+4.5%と堅調だが、昨年末から情勢は徐々に悪化しているとみており、一段の上値追いは慎重にみたい。
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