FOMC議事要旨:FRBの現状認識と市場の期待に温度差
2021-01-07
■ FOMC議事要旨では、一部参加者から資産購入増額、米国債の購入年限長期化が求められた
■ ただ、目標達成後の段階的縮小への言及もあり、必ずしも追加金融緩和に積極的な訳ではない
昨年12月15、16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表された。FOMCでは金融政策は据え置かれたが、声明文の資産購入プログラムに関するガイダンスが修正され、「雇用最大化と物価安定の目標達成に向けて著しい進展がみられるまで」現行ペース(月1200億ドル)での資産購入を継続する方針が掲げられた。従来の「今後数カ月間」から、結果に基づくガイダンスに変更されたが、特定の基準や閾値に基づく定量的目標の導入は見送られている。
昨日の議事要旨では、資産購入の規模や構成について、2、3人の(a couple of)参加者が米国債の購入年限の長期化を主張し、数名の(some)参加者は資産購入増額か米国債の購入年限の長期化に言及したことが明らかとなった。ただ、多くの(a number of)参加者は、目標達成後には2013-2014年のように緩やかなペースでの資産購入の段階的縮小(tapering)を開始すべきと考えていることも示されている。
FOMCと同時公表された「経済見通しの概要(Summary of Economic Projection、SEP)」では、2020-2022年にかけての実質GDP成長率の見通しが引き上げられ、初めて公表された成長率見通しのリスクバランスからは、見通しの下振れに対する参加者の警戒感が9月時点よりも幾分和らいでいることがうかがえる。FOMC後に追加経済対策が成立し、参加者が挙げている経済の下振れリスクが和らいだことを踏まえると、国債発行の増額に伴って進行している長期、超長期国債利回り上昇への対応で国債購入の対象年限の見直しなどが検討される可能性はあろうが、米連邦準備理事会(FRB)が現時点で追加金融緩和に積極的であるとは考えづらい。市場参加者の一部で広がる資産購入増額などの追加金融緩和に対する期待とFRBの現状認識の間にギャップが広がりつつある印象を受ける。今後、市場の金融緩和期待が後退する場合、相場調整の引き金の1つとなり得ることは頭の片隅に置いておく必要があるだろう。