9月第3週相場展望(9/14-18)
2020-09-14
先週の注目だった米国ナスダック市場の急落で、同指数は高値から安値まで約12%下げた。ダウ平均は約7%、S&P500指数は約8%の下げで今回はナスダック指数の下げが目立った。テスラやアップルの株式分割前から他のIT関連銘柄も高水準の出来高に加え上昇率も大きかったことで、調整に入るのは致し方ないとの見方が多数のようだ。このような短期的なバブル相場も超低金利政策がもたらす歪みであり、その訂正も急な動きとなってくる。新型コロナ発生時の大きな下落は別として、過去に同じような動きは今年の6月にも起きている。その時は、ナスダック指数が初めて1万ドルに乗せた直後の下落であった。ダウ指数が一日で約1800ドル(約7%)下げて今回同様に肝を冷やしたものである。その時の引き金になったのが、米国FOMCでの政策を前回同様の継続としたことと、市場が期待していたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)に関して否定したことで、利食いが大きく入り短期急落への背景となった。しかしその後、FRBは社債購入プログラムとして「セカンダリーマーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティ(SMCCF)」及び「プライマリーマーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティ(PMCCF)」で、7,500億米ドル(約80兆円)もの社債購入枠を設定し、投資適格社債などの購入を開始した。その結果、株価は持ち直し再び上昇基調に戻っている経緯がある。
(米国株式相場-前回下落との比較)


その時の下落率などをみると近いものはあるが、今回は理由となるイベントやファンダメンタルズからの要因が見当たらず、米国雇用統計という大きなイベント前に下げ始めた理由と唯一言えるのはテクニカルからの下落であり、ITやハイテク銘柄の一部に大きな売買があったことからの反動安、一時的な調整安と考えている。となると、今後反発もと思われるだろうが、こういう時に限って危険なのは、下落が始まったところにネガティブインパクトのある要因が出現すると株価の大きな調整を余儀なくされる。例えば、米中の貿易摩擦や政治及び経済摩擦、また内戦などの勃発もその理由となりやすいから、要注意な時期であることは間違いない。また今回は25日移動平均線を大きく下回っており、下回った幅も同様に大きく、1日で線上に回復した6月の時と違ってその点に違いがみられることも気に掛かるところ。
テクニカルからはナスダック指数8月の安値である10762ドルを下回り、先月の安値を下回ったまま今月が終了となると陰線となりチャート形状が悪い形になるため、調整が長引く可能性が大きくなると考えていたがそれは回避された。今年は米国の大統領選挙が11月に控えていて、いつもその時期のアノマリー的に9~12月には大きな調整がしばしば起きているのでその流れの一環と考えても良いだろうが、調整の大きさや長さは今後の動きに掛かってくるだろう。下値抵抗は10500付近にあり、これを下回ると調整が長引く可能性が大きいと考えている。
(米国ナスダック指数の日足チャート)


米国株が波乱下の中、目立って堅調なのが欧州株であり、DAX指数は高値圏からなかなか落ちていない。これは先日合意された新型コロナウイルス復興基金が大きいようだ。またECB理事会では、これまでの政策維持を決定した。ラガルド総裁は、新型コロナウイルスからの景気回復に関してはやや前向きの見方を示した。またユーロ通貨に関しては、ユーロの上昇は懸念の一つだが、為替相場についてターゲット値はないと言及があったことで、ユーロは反転上昇している。ただ未だ高いレベルだと考えられていることは明白で、上値を追っていくのは簡単ではないだろう。今後ユーロが高くなる際には、都度高官からけん制発言がされる可能性は大きいと思われる。ユーロドル1.2の大台に乗せるようなことがあれば、米国との貿易絡みや数値自体が目立ってくるため何らかの大きなけん制発言等の可能性を考えている。
このところ為替相場の中では、比較的大きな下落となっているのがポンドであり、ブレグジットに絡む新たな火種が影響している。英コック政府は、EU離脱協定の一部を無効化する法案を議会に提出した。ジョンソン首相は、離脱協定の北アイルランドに関する条項を巡る不合理な解釈から国を守る必要があると発言しており、EU側からは交渉手段だとする見方も出ている。EUはまた、英国が協定の修正を行えば、自由貿易協定は実現しないと警告している。この結果、市場ではブレグジットへ向けてのハードランディングの可能性が出てきたと考える関係者が出始めており、ポンドの下げにつながったと考えられる。ポンドは対ユーロで大きく下落しており、対ドルのポンドドル相場でも今年3月からの上昇トレンドラインを下回り、25日移動平均線が下向きとなっているため、今週も引き続き軟調な展開を想定する。上値は1.2900付近が重く、
下値の抵抗は1.2717付近にあり、次は1.2600付近となりそう。
(ポンドドル日足チャート)


今週の中心イベントは、英国、米国、日本と三か国の中央銀行金利政策の発表となる。FRBは一時的にインフレ率が2%を上回ることを容認する発言があり、それに向けての運営手法が示されるかが注目される。日銀は、米国と比較すると緩和余地が少なく、新型コロナウイルス感染者数がやや減少していく中で政策へ様子見の予想が多く、自国の首相が空席ということもあり黒田総裁の発言等は平穏なものになっていくだろう。また事実上の新首相となる自民党総裁選は今日の午後に開催される予定で新総裁が決定される。菅氏でほぼ決まった感のある総裁選だが、これまで相場へ大きな影響力を保ってきたアベノミクスを引き継いでいくだろうが、彼独自の政策や運営方法に注目したい。