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株式市場:投資家の景気後退懸念が一段と強まる

2022-07-05

■ 景気減速を示す経済指標に対する株価の反応に変化

■ 中銀がインフレ抑制に成功したと判断すれば、株価は本格的に底入れする可能性


   先週末1日に公表された6月のISM製造業景気指数は53.0と、前月の56.1から低下し、2020年6月以来の低水準を付けた。市場予想(54.9)も下回った。景気後退が近いことが示唆される48.7までにはまだ距離があり、景気後退が差し迫っているとまでは言えないものの、景気減速感が強まったことは確かである。同指数のサブ指数のうち、生産活動の先行きを示す新規受注指数が49.2と前月の55.1から大きく低下し、約2年ぶりに拡大と縮小の節目である50を下回った。輸送機器、電気機器・部品メーカーなど一部業種で需要は堅調に推移したが、大部分の業種では受注が伸び悩んだ。また、資材調達に要する時間を示す入荷遅延指数は57.3と、65.7から低下。供給網を巡る問題が緩和した可能性があるが、需要の減退も一因と考えられる。仕入価格指数は78.5と82.2から低下し、インフレがピークを付けた可能性があることが示唆された。
    これまで株式市場では、景気減速を示す経済指標は金融引き締め姿勢が緩和するとの連想から株価上昇要因となりやすかった。しかしながら最近は、景気後退懸念の高まりと素直に受け止められ、株価下落要因となっている。このように金融市場の反応が変化した背景には、主要国中銀がインフレ抑制姿勢を揃って明示したことがあろう。6月29日まで開催されていた欧州中銀(ECB)フォーラムの最終日に、米欧英の3中銀トップが討論会を行った。このなかで、新型コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻という大きなショックを経て、低インフレの時代は幕を下ろしたとの認識が共有された意義は大きい。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、景気後退懸念はあるものの、物価安定を失うほうがリスクは大きいと訴えたほか、ラガルドECB総裁はインフレ期待が大幅に高まっていると語った。ベイリー英中銀(BOE)総裁はインフレ長期化のリスクが強まれば、より力強く行動すると述べており、3中銀トップが揃って持続的なインフレに危機感を露わにした格好となった。こうしたなか、株価が本格的に底入れするためには、各国中銀がインフレ期待の抑制に成功し、金融引き締めの必要性が薄れたと判断することが条件のひとつとなるだろう。
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